マイクロ化学プロセス処理により、
高分子を低分子化。
化学的論拠が曖昧だったサプリメントを
はじめとする栄養学の
解像度を高め、
体と学問に高吸収性をもたらす情報メディア。
吸収科学
- 北海道立総合研究機構工業試験場との共同研究に関するレポート
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マイクロ化学プロセスとは
高分子コンドロイチン硫酸から、吸収性に優れたコンドロイチン硫酸オリゴ糖をつくるために、当社ではマイクロ化学プロセスという方法を用いています。これは、マイクロリットル~ミリリットル単位での微小空間において化学反応を行う方法のことです。簡単に言いますと、パイプの中に原料を通すと、出口では目的物質が出来ているというイメージです。
コンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造は、これを高温高圧状態で連続的に行います。この方法は、水のエネルギーによって糖鎖の結合を分解するため、クリーンで安全であり、芽胞細菌をも死滅させることが出来るため、食品としての安全性にも優れた技術です。コンドロイチン硫酸オリゴ糖を産業利用できるほどの生産技術は、沢山の方法が考えられてきましたが、残念ながらいずれも成功したものはありませんでした。そのため、コンドロイチン硫酸オリゴ糖は1キログラム当たり160億円という信じられない値段でした。(精製した試薬グレードの価格:16000円/mg)
このような値段では、動物試験などの研究開発ができません。しかしながら、当社では世界で初めてコンドロイチン硫酸オリゴ糖の大量生産に成功したために、この価格を劇的に安くすることが出来ました。これによって、動物やヒトへの投与試験が可能となり、糖鎖医薬への応用へ道を拓くことができたと考えています。S. Yamada et al., Mass preparation of oligosaccharides by the hydrolysis of chondroitin sulfate polysaccharides with a subcritical water microreaction system , Carbohydrate Research. 2013, 371, 16-21.
河原ら, 単一分子量に単離精製されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖の大量調製, 応用糖質科学, 2021, 11(2), 94-99
- なぜ関節は年を取ると痛くなるのか
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軟骨で衝撃を吸収
膝関節には歩行時に体重の2倍以上の力が、走行時に体重の5倍以上の力がかかると言われています。この衝撃を吸収しているのが、半月板と関節軟骨です。この2つの組織が、固い骨である大腿骨と脛骨がぶつからないように、クッションの役割を担っているのです。
軟骨は消耗するが再生力は弱い
膝軟骨には体重などの強い力が常に加わっているために、軟骨と半月板は常に消耗しています。軟骨は体の中でも再生速度がとても遅い組織です。それは、軟骨組織には血管と神経が、ほとんど無いためと考えられています。このような再生が遅い軟骨組織は、年齢とともにだんだん薄くなっていきます。加齢による膝関節痛の原因は、軟骨の消耗であることが一般的です。
軟骨の消耗による変形性膝関節症は国民病
健康な方の膝関節をX線で撮影すると、上の大腿骨と下の脛骨の間に、隙間が空いているのがわかります。この隙間には、X線写真では写らない軟骨があります。この軟骨が薄くなって、隙間が部分的に無くなってしまったのが変形性膝関節症です。軟骨がすり減ってしまった為、隙間が狭く、部分的には骨と骨が接触しています。このような状況になると、痛みが発生し、変形性膝関節症と診断されます。現在、日本には高齢者を中心に変形性膝関節症の患者が、700万人以上いると厚生労働省は発表しています。
- サプリメントにできることは?
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サプリメントは医薬品ではありません。しかしながら、食品に薬効が無いとは誰も思っていません。医薬品とは人間が定義しただけのもので、定義に当てはまらないからと言って、摂取しても無駄ということではありません。それはただ単に、研究がなされていないだけかもしれません。例えば、大航海時代に壊血病の予防に柑橘類が必要とされた事を思えば、当時、柑橘類は医薬品であったとも言えます。
食品の中には様々な成分が混然一体となって存在し、それぞれが何らかの役割を果たしています。タンパク質、脂質、炭水化物などはその代表的なものに過ぎません。食品の成分を抽出し、摂取しやすい形にしたのがサプリメントであり、日常的に摂取しづらいものについては、上手に活用することで健康維持に役立ちます。しかしながら、効果効能は千差万別であり、効果の体感できる場合もあれば、そうではない場合もあるので、よく体調を確かめながらご利用ください。
但し、有用成分が適切に配合されているかどうか、品質を良くお確かめください。残念ながらサプリメント業界では粗悪品が多いのも事実ですし、インターネットの情報にも間違いがとても多いので注意が必要です。 - 経口摂取によるサプリメントの吸収性とは?
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ほとんどの食物は消化されて分子レベルに小さくならないと、腸管から吸収されません。これは、生命の維持にとっても極めて重要な仕組みで、大きなものが体の中に入ってしまうと、生体組織に必要なものが作れないからです。例えると、レゴブロックは小さいパーツになっているからこそ様々な形のものが作れますが、パーツが大きいとその自由度は大きく低下し、作れるものが制限されてしまうようなものです。
従って、ヒトは小さく消化されたものしか、栄養素として吸収しません。サプリメントも同様で、吸収されるためにはその成分のサイズがとても重要となります。我々の最新の研究では、コンドロイチン硫酸はせいぜい八糖サイズ(分子量2,000程度)までしか、腸管吸収されません。当社以外で市販されているコンドロイチン硫酸はすべて高分子のコンドロイチン硫酸ですので、腸管吸収されないものが使われています。 - なぜ、ナノ型にすると高機能と言えるのだろうか?
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コンドロイチン硫酸は鎖のような直鎖高分子なので、断面(直径に相当)と長さが大きく異なります。長さが違っても、断面は同じなのでナノ型とは長さについての表現です。ナノ型コンドロイチンの平均分子量は2,000程度ですので、この場合の長さはおおよそ20ナノメートルと考えられます。
ではなぜナノ型にすると機能性が良くなるのでしょうか?その答えもやはり吸収性の違いにあります。どんなに高機能な素材であっても、吸収されて細胞に届けられなければ、何の意味もありません。ナノ型コンドロイチンは、腸管から吸収されて血液に入り、細胞にまで届けられるため機能を発揮することが出来るのです。 - 培養細胞を使った遺伝子の解析から言えること
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なぜ細胞で実験するのでしょうか?
生物の仕組みを知りたい。病気を治す薬を作りたい。そのようなとき、どのような実験をすればよいでしょうか。大きく分けると、生物を使わない試験と生物を使う試験の2つの方法があります。
生物を使わない試験では、タンパク質などの物質を使った化学的試験を実施します。生物を使う試験は動物での試験、ヒトでの臨床試験があります。そしてその中間に細胞を使う試験があります。化学的試験は純粋な物質と物質の関係性を明らかにする詳細のメカニズムがわかります。しかし、生物に対してどのような効き目があるかはわかりません。生物を使う試験では、効き目(効果)はわかります。
しかし、なぜそのような効果があるかすなわち、メカニズムがわかりにくい試験です。それは生物が非常に複雑な様々な仕組みから成り立っているためです。生物でのある程度の機能がわかり、さらに、関与する仕組みが少ない為、ある程度のメカニズムもわかる細胞試験はある意味両者のいいところをとった試験なのです。細胞では何が起こっているか
生物は細胞を最小単位として作られています。細胞の中にはDNAという物質で作られているたくさんの遺伝情報が入っていいます。遺伝情報とは細胞が必要とするタンパク質の設計図で、これを遺伝子と呼びます。ヒトは約2万個の遺伝子を持っています。
1つのタンパク質をつくるためには、遺伝子上にあるDNAから、作りたいタンパク質に対応したRNAと呼ばれる物質がつくられます(転写といいます)。このRNAはアミノ酸を設計図通りに並べることでタンパク質を作ります(翻訳といいます)。
このRNAは、作りたいタンパク質1つに対して1つ必要です。その為たくさんのタンパク質を作りたい時には、RNAをたくさん作ることになります。その為、細胞で何が起こっているかを調べるためには、作られたRNAの量を調べれば多くのことが解るのです。このことを遺伝子の発現解析といいます。細胞での遺伝子発現を調べる
細胞は細胞外部からの物質添加などに反応した場合にも、新しくタンパク質を作る事があります。その時には必ずそのタンパク質のもとになるRNAを作ります。その為、細胞がその物質に反応しているか調べるためには、新しく作られたRNAの数を測定します。RNAはコロナウイルスの検査と同じように、PCRを使うことにより微量なRNAの数を測定できるのです。
細胞試験で解ること
培養細胞に機能を調べたい物質(被験物質といいます)を添加して、RNAを測定することにより、細胞がその物質にどのように反応しているかを調べることが出来ます。動物やヒトを使うと数カ月かかる実験が、数日~2週間程度で可能になり、どのようなタンパク質をつくるようになったかを明確に知ることが出来るのです。
- 培養細胞を使ったコンドロイチン硫酸オリゴ糖の研究データ
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Ⅰ.コンドロイチン硫酸オリゴ糖がマウス軟骨細胞へ与える影響
マイクロ化学プロセス法により低分子化した、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の軟骨組織を形成する細胞への機能性評価を目的に、マウス軟骨形成細胞株ATDC5への添加培養を実施しました。(ATDC5とはマウス腫瘍由来未分化細胞であり、培養により未分化状態から軟骨形成を再現できる細胞)
ATDC5に高分子コンドロイチン硫酸(HMWCS)、低分子化したコンドロイチン硫酸オリゴ糖(CSOS)および、CSOSから分離分画した、低分子の二糖(CS2mer)を添加(1 mg/mL)し培養を実施しました。遺伝子発現解析として、軟骨系細胞外マトリクス(ECM)であるII型コラーゲンとアグリカンコアタンパク質をコードする遺伝子(Col2a1,Acan)を、リアルタイム定量PCRによる測定を実施(図1)。合わせて、培養後にECMに含まれるCS量をHPLCにより定量しました(図2)。図1 培養13日目の各種被験物質添加時の遺伝子発現
各被験物質(CONT:無添加,HMWCS:高分子コンドロイチン硫酸平均重量分子量140,000,CSOS:コンドロイチン硫酸オリゴ糖平均重量分子量2000,CS2mer: コンドロイチン硫酸二糖平均重量分子量500)を分化誘導培地に1 mg/mLの濃度で添加し、培養13日目に細胞を回収してRNA抽出の後,各遺伝子用 プライマーを用いてRT-qPCRを実施した。測定値を培養DAY0の未分化細胞での発現値を1とした発現量比をグラフ化した。エラーバーは標準偏差。検定方法はTukey法での多重解析を実施した (* P < 0.05 )。A Col2a1の発現 B Acanの発現図2 培養19日目の各種被験物質添加培養時のECM中に含有されるCS量
各被験物質(CONT:無添加,HMWCS:高分子コンドロイチン硫酸平均重量分子量140,000,CSOS:コンドロイチン硫酸オリゴ糖平均重量分子量2000,CS2mer: コンドロイチン硫酸二糖平均重量分子量500)を分化誘導培地に1 mg/mLになるよう添加し、培養19日目に遠心分離により細胞塊を回収しCS量を測定した。CS量は、Superdex 30 Increase10/300 カラムによるHPLCから求めた。ECM中に含有されるCSをCSaseABC消化し、CS二糖としてUV240 nmで検出した。標準物質としてCS-AのCSaseABC分解産物から得られた検量線と比較し定量を行った。エラーバーは標準偏差。検定方法はTukey法での多重解析を実施した(* P < 0.05)その結果、コンドロイチン硫酸オリゴ糖およびコンドロイチン硫酸二糖は、高分子コンドロイチン硫酸と比較して、Ⅱ型コラーゲン遺伝子の発現を有意に上昇させ、細胞外マトリクスとしてのコンドロイチン硫酸量を有意に増加させました。この結果から、コンドロイチン硫酸オリゴ糖は、高分子コンドロイチン硫酸と比較して、軟骨組織の形成に有用である可能性が示されました。
- コンドロイチン硫酸オリゴ糖の吸収性研究データ
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Ⅰ.反転腸管試験
ラットから摘出した腸管の裏表を反転させ、一方を結索したのち、もう一方にポリエチレンチューブを結索した。これを2本作製。あらかじめ37℃ に保温した各試験溶液10mL 入りの15mL チューブに反転腸管をすみやかに入れ、95%O2-5%CO2混合ガスを吹き込みながら1本は30分間、もう1本は60分間穏やかに振盪させた。試験溶液は、高分子コンドロイチン硫酸(Mw.=150,000)およびコンドロイチン硫酸オリゴ糖(Mw.=2,000)を、pH7.4の生理食塩水各に20mg/mLとなるよう溶解したものを用いました。
各時間毎に反転腸管の内液と外液をサンプリングし、カルバゾール法でコンドロイチン硫酸濃度を測定しました。
<結果>
コンドロイチン硫酸オリゴ糖は高分子コンドロイチン硫酸と比較して、254倍の腸管膜透過性が確認されました。Ⅱ.ラットへの単回経口投与試験 コンドロイチン硫酸オリゴ糖の吸収性(体内動態)について
ラットへの経口投与試験で、高分子である従来のコンドロイチン硫酸摂取群では、尿中からも糞便中からもコンドロイチン硫酸が検出されませんでした。このことは、経口摂取したコンドロイチン硫酸が小腸で吸収されず、盲腸や大腸で腸内細菌の餌としてすべて分解されてしまったことを意味します。
一方で、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を経口摂取させた群では、尿中からも糞便中からもコンドロイチン硫酸が検出されました。これは、コンドロイチン硫酸オリゴ糖は小腸で吸収され、血中へ移行したのち尿から排出されたこと、および吸収しきれなかったものは、腸内細菌の消化をあまり受けずに排出されたことを証明しています。CS2mer : コンドロイチン硫酸二糖(ナノ型コンドロイチン構成成分)
HCS : 高分子コンドロイチン硫酸(コアタンパクから遊離したコンドロイチン硫酸)
PG : プロテオグリカン (コアタンパクに結合した状態のコンドロイチン硫酸)被験物質400mgをラットに単回投与し、0~24時間および24~48時間のすべての尿を回収して、含まれる被験物質の量を定量した。24~48時間の尿にはいずれも検出されなかったため記載は省略した。定量は共通の成分であるコンドロイチン硫酸二糖として分析した。
上図 ラット一尾当たりの被験物質投与後24時間尿中排泄量合計(mg/head)
Ⅲ.腸内細菌によるコンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸オリゴ糖の代謝
動物の腸内細菌はコンドロイチン硫酸を分解する消化酵素を体外へ分泌し、高分子コンドロイチン硫酸を小さく分解して体内へ取り込み、栄養源として利用します。この消化酵素の作用は、脱離反応を触媒する酵素ですのでコンドロイチン硫酸の切断面に二重結合が生じます。(非還元末端C4-C5に二重結合が生じる)腸内細菌はこの状態の低分子コンドロイチン硫酸を非常に良く消化します。一方で、マイクロ化学プロセス処理で製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、脱離反応ではなく加水分解反応によって分解されるため、切断面に二重結合が生じません。(これを飽和糖と言います)我々が行った、ラットの糞便中の細菌を用いた実験では、腸内細菌は不飽和糖は良く食べますが、飽和糖はわずかしか食べませんでした。この結果は、非常に理にかなっています。なぜなら、細菌が体外へ酵素を分泌するのは、自分自身が酵素分解生成物を利用するためだからです。飽和糖は細菌自身が分解した成分と異なるために、食べ物と認識しづらいのかも知れません。
<結果>
高分子コンドロイチン硫酸は腸内細菌で分解されるが、すぐに腸内細菌に利用されるため腸管から吸収されない。一方、マイクロ化学プロセス処理で製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、腸内細菌に認識されにくいため利用されず、腸管から血中へ移行する。- 人体での吸収に関する高分子と低分子の比較
ヒト介入試験で、コンドロイチン硫酸オリゴ糖(ナノ型コンドロイチン)は経口摂取によって血中へ移行することが確認されました。経口摂取後、2〜3時間で血中濃度がピークとなり、その後4~5時間後には尿中濃度がピークとなります。コンドロイチン硫酸オリゴ糖は経口摂取で血中へ移行し、血流によって全身の組織へ届けられることが証明されました。
CS4糖を経口投与した被験者の血漿のHPLCクロマトグラム
上図が被験者1の血漿(検体1)をサンプルとしたクロマトグラムであり、下図が被験者2の血漿(検体2)をサンプルとしたクロマトグラムである。また、点線がCS4糖の投与前の血漿をサンプルとしたクロマトグラムであり、実線がCS4糖を経口投与した後の血漿をサンプルとしたクロマトグラムである。
- コンドロイチン硫酸オリゴ糖の機能性研究データ
Ⅰ.コンドロイチン硫酸オリゴ糖の抗炎症性試験
関節炎惹起モデルマウスにおける分子量の異なるコンドロイチン硫酸の抗炎症作用
関節炎惹起モデルマウスに、被験物質としてコンドロイチン硫酸オリゴ糖を100mg/dayおよび400mg/day、高分子コンドロイチン硫酸を400mg/day、対象として何も与えない群の全4群に対しそれぞれ28日間連続投与し、関節の浮腫の状態をスコアとして算定し評価しました。
<結果>
コンドロイチン硫酸オリゴ糖は、高分子コンドロイチン硫酸に比べて、低用量で関節炎の改善可能性が示唆されました。Ⅱ.ヒト介入試験(膝関節改善)
コンドロイチン硫酸オリゴ糖を被験物質とした膝関節機能改善作用に関するプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験
日本における人口高齢化率の増加は、変形性関節症(OA)の発生率の増加につながっています。コンドロイチン硫酸は、OAに伴う痛みと腫れを軽減し、膝の機能を改善することが報告されています。我々は健康な日本人の膝関節痛患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験において、経口コンドロイチン硫酸オリゴ糖の膝機能に対する安全性と効果を評価しました。
被験者はランダムに試験群とプラセボ群に分けられ、100 mgのコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含む活性試験カプセルまたはプラセボカプセルが8週間毎日投与されました。日本変形性膝関節症測定(JKOM)、視覚アナログスケール(VAS)、血液および身体検査、および問診は、0、4、および8週目に実施しました。
JKOMスコアは、テストグループ間で有意差はありませんでしたが、VASスコアが悪い被験者群では、8週間の時点で、コンドロイチン硫酸オリゴ糖投与群の被験者のJKOMスコアが、プラセボ投与群の被験者と比較して有意に低値となりました。さらに、コンドロイチン硫酸オリゴ糖投与群では、ロコモティブシンドロームのリスクを評価するスタンドアップテストでの被験者のスコアを改善する傾向がありました。投与期間中において、身体検査、血液検査または問診において、異常または重篤な有害事象は観察されませんでした。M. Nishimura, N. Miyamoto and J. Nishihira, Daily Oral Chondroitin Sulfate Oligosaccharides for Knee Joint Pain in Healthy Subjects: A Randomized, Blinded, Placebo-Controlled Study, The Open Nutrition Journal, 2018, 12, 10-20.
Ⅲ.コンドロイチン硫酸オリゴ糖の抗血小板作用
健康な被験者によるコンドロイチン硫酸オリゴ糖100mg/day、4週間の経口摂取によって、血小板凝集能の有意な低下が認められました。
特願2021- 94977 抗血小板剤、血小板粘着抑制剤、血小板凝集抑制剤、抗血栓剤、血小板粘着および/または血小板凝集を抑制するための食品組成物ならびに血栓症を予防または改善するための食品組成物Ⅳ.コンドロイチン硫酸オリゴ糖の皮膚透過性
培養皮膚モデルを用いて、高分子コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸オリゴ糖の皮膚透過性試験を実施しました。その結果、高分子コンドロイチン硫酸はほとんど皮膚を透過しなかったが、コンドロイチン硫酸オリゴ糖は分子量依存的に皮膚透過性が著しく増大することが確認されました。
- 北海道大学との共同研究に関するレポート
Ⅲ.抗肥満作用
エイ軟骨由来コンドロイチン硫酸オリゴ糖およびエイ軟骨由来コンドロイチン硫酸(高分子)による抗肥満効果についての論文が北海道大学大学院水産科学院より発表されました。
この研究は、カスべ(ガンギエイ)軟骨由来コンドロイチン硫酸の抗肥満効果を明確に示しています。in vitroおよびin vivo試験によって、カスべ軟骨由来コンドロイチン硫酸オリゴ糖には腸でのトリグリセリドの吸収を阻害するリパーゼ阻害活性、脂質の蓄積を減らすための脂肪細胞抑制活性を持っています。これによって、高脂肪食マウスの体重増加を制御することが証明されました。
さらに、高脂肪食によって引き起こされる、腸管タイトジャンクションの弛緩によるエンドトキシン(細菌毒素)の血中への移行を防ぐ効果も明らかとなっています。
【概要】
コンドロイチン硫酸の分子量の違いは、カスべ由来コンドロイチン硫酸の抗肥満効果についての作用機序の違いをもたらします。高分子コンドロイチン硫酸(腸内で吸収できないCS多糖類)は、強いリパーゼ阻害活性によって腸での食餌性脂肪吸収を阻害します。
一方、コンドロイチン硫酸オリゴ糖は腸管で吸収されやすく、脂肪細胞を抑制し脂質蓄積の低減をもたらします。
これらの結果は、両方のコンドロイチン硫酸を含む処方によって、抗肥満を目的とする機能性食品に効果的と思われます。Wen Li et al., Anti-obesity effects of chondroitin sulfate oligosaccharides from the skate Raja pulchra, Carbohydrate Polymers, 2019, 214, 303-310.
Ⅳ.抗酸化活性
コンドロイチン硫酸(CS)およびII型コラーゲンが豊富であるスケート軟骨の特性を調査。酵素加水分解II型コラーゲンペプチド(CP)を調製し、その抗酸化活性を研究しました。高いフリーラジカル消去活性は、パパイン加水分解CP(Pa-CP)の<3kDa画分で観察され、熱加水分解したコンドロイチン硫酸オリゴ糖(CSo)を製造し、抗酸化活性を分析。この活性は主に、高温加水分解によって形成された非酵素褐変反応の中間および最終生成物によるものです。さらに、製品にはフラボノイド様化合物が含まれていた可能性があります。また、Pa-CPおよびCSoは細胞毒性を示しませんでした。
Pa-CPとCSoは、腸内吸収性が高いため、貴重な抗酸化機能食品として機能する可能性があります。Wen Li et al., Antioxidant and fibroblast-activating activities of the by-product of skate chondroitin extractive production, Sustainable Chemistry and Pharmacy ,2021, In Press
- 研究開発成果の学術論文発表【自社分】
エイ軟骨コンドロイチン硫酸の生理活性
Hashiguchi, T. et al. Demonstration of the hepatocyte growth factor signaling pathway in the in vitro neuritogenic activity of chondroitin sulfate from ray fish cartilage. Biochim. Biophys. Acta - Gen. Subj. 1810, 406–413 (2011).
マイクロ化学プロセスによるコンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
S. Yamada et al., Mass preparation of oligosaccharides by the hydrolysis of chondroitin sulfate polysaccharides with a subcritical water microreaction system , Carbohydrate Research. 2013, 371, 16-21.
コンドロイチン硫酸オリゴ糖によるロコモティブシンドロームの治療
M. Nishimura, N. Miyamoto and J. Nishihira, Daily Oral Chondroitin Sulfate Oligosaccharides for Knee Joint Pain in Healthy Subjects: A Randomized, Blinded, Placebo-Controlled Study, The Open Nutrition Journal, 2018, 12, 10-20.
コンドロイチン硫酸オリゴ糖の抗肥満作用
Wen Li et al., Anti-obesity effects of chondroitin sulfate oligosaccharides from the skate Raja pulchra, Carbohydrate Polymers, 2019, 214, 303-310.
コンドロイチン硫酸オリゴ糖の純品精製法
河原ら, 単一分子量に単離精製されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖の大量調製, 応用糖質科学, 2021, 11(2), 94-99
コンドロイチン硫酸オリゴ糖の抗酸化活性
Wen Li et al., Antioxidant and fibroblast-activating activities of the by-product of skate chondroitin extractive production, Sustainable Chemistry and Pharmacy ,2021, 23, 100499.
経口で投与されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖のヒトの血漿および尿中における定量
H. Mizuta et al,Quantification of orally administered chondroitin sulfate oligosaccharides in human plasma and urine, Glycobiology, Volume 33, Issue 9, September 2023, Pages 755–763, https://doi.org/10.1093/glycob/cwad054
- コンドロイチン硫酸オリゴ糖の最新研究論文【社外分】
コンドロイチン硫酸オリゴ糖は神経細胞のアミロイドβ傷害を抑制し抗アルツハイマー病効果を持つ
Na Zhao et al., Study on the relationships between molecular weights of chondroitin sulfate oligosaccharides and Aβ-induced oxidative stress and the related mechanisms, Glycobiology, 2021, Vol.31, no.4, 492-507.
サメ・エイ由来のC型コンドロイチン硫酸オリゴ糖は抗補体活性により変形性膝関節症の発症を予防する。
Lian Li et al., Preparation of Low Molecular Weight Chondroitin Sulfates, Screening of a High Anti-Complement Capacity of Low Molecular Weight Chondroitin Sulfate and Its Biological Activity Studies in Attenuating Osteoarthritis, Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 1685; doi:10.3390/ijms17101685.
低分子コンドロイチン硫酸Cは大腸癌を抑制する。
Ruiyun Wu et al., Structural analysis and anti-cancer activity of low-molecular-weight chondroitin sulfate from hybrid sturgeon cartilage, Carbohydrate Polymers. 2022, 275, 118700
吸収用語
- 腸管吸収
- 口から入ったものが腸管(主に小腸)で体内に取り込まれること。
- 経口摂取
- 口から物質を入れる事。動物実験では、経口摂取か静脈注射のいずれかが使われるが、腸管吸収されないものは静脈注射するしかない。
- 消化酵素
- 化合物を分子レベルで小さくする機能を持つタンパク質。代表的なものは、唾液アミラーゼで、でんぷんを分解して、麦芽糖にする。
- 酵素
- タンパク質でできた触媒。生命は酵素の働きで維持されていると言える。タンパク質なので、口から飲んでも活性を失うため効果はない。
- アミノ酸
- 一分子にアミノ基とカルボキシ基をもつ化合物の総称。タンパク質を作る最小分子である。
- 糖
- 炭水化物と言われるとおり、炭素と水酸基からなる化合物の一般名。グルコースやガラクトースなどが代表的なもの。
- 脂質
- アルキル基とカルボキシ基からなる化合物。例えばオレイン酸、リノール酸などの類似物質の総称。分子内に二重結合を持つものを不飽和脂肪酸、持たないものを飽和脂肪酸という。
- 核酸
- 4つのヌクレオチド(糖、塩基、リン酸の化合物)からなる化合物。DNA、RNAの総称。